幸せな照明器具

照明器具の修理、それも私どもで販売したものではなく、お客様が大切に使ってこられた器具を修理するチャンスがときどきありました。

ところが、今回は私どもで販売した照明器具の修理依頼です。

3月11日の地震により、ランタンのガラス部分が壊れた。ガラス部分のみを交換できないか、とのことでした。いろいろと探しましたが、そのランタンがすでに生産中止になったものですから、どうしてもガラスのみの調達ができません。似たようなものも探したのですが、どうもうまくいかないようで、お客様にお詫びとともにそのむねをお伝えしたのです。

そして数週間。

そのお客様、山梨県のN様から封書が届きました。中にはそのランタンの写真が入っていましたが、それはなんとみごとに修繕されたランタンのガラスです。ばらばらになったガラスの破片部分が見事に『金繕い』によって継ぎ合わされています。これは昔から伝わる陶器修復の手立てですが、これをガラスに応用なさったというわけです。

もともとガラス以外の金属部分は真鍮を使っているために、修繕の金とその金具の真鍮とが実によくマッチしていて、もしかして最初から飾りでこの金繕いが使われているのでは、と間違って思ってしまうほどです。

本当にありがたいことだと思います。そしてすばらしいことだと思います。お客様のてもとでこんなに私どもの照明がかわいがって頂いているのです。

これでN様にとってはこの照明がこの世にただ一つのものになったわけで、私も経験ありますが、そのときの喜びは何ものにも代え難いものです。

もちろん、地震が不可抗力とはいえガラスが割れたことじたいは本当に残念で、しかもそれがたまたま今は代替品が入手できないという不幸が重なったことは申しわけなくて仕方が無いのですが、それを勝手に横におかせていただき、今回のことは実にしあわせな出来事でした。

Nさんご夫妻、このたびは本当にありがとうございました。

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